JNJジョンソン・エンド・ジョンソン暴落の原因理由、売りか買いか

かぶとたいぞうです。

先週末、医薬品、衛生関連大手のJNJジョンソン・エンド・ジョンソン(ニューヨーク証券取引所)の株が突如10%暴落しました。



ジョンソン・ベビー・パウダーに発がん性物質アスベストが混入!?

原因は同社の人気商品「ジョンソン・ベビー・パウダー」に発がん物質アスベストが混入している旨の報道があったからです。

「ジョンソン・ベビー・パウダー」はスーパーマーケットでも売っている赤ちゃん用のパウダーです。私が愛用している「ジョンソン・ベビー・ソープ」(石鹸)とならんで、同社の人気商品のひとつです。



ロイター通信「アスベストが含まれていたことを黙認」

ロイター通信によると、「同社の社内文書を調べあげたところ、少量のアスベストが含まれていたことを同社は何十年も前から認識していたにも関わらず黙っていた」とのこと。

有名な「わが信条=クレド」をかかげ、顧客への誠実・誠意をモットーとしていた同社にとって、この報道はたいへんな痛手となりました。

ただし、ジョンソン・エンド・ジョンソンの主力商品は医薬品と医療機器で、この2つで全売り上げの83%を占めます。

いっぽう、今回問題になっている「ジョンソン・ベビー・パウダー」は消費者部門に属する製品です。消費者部門の売り上げは、全売り上げの約17%しかありません。



クレドを掲げるジョンソン・エンド・ジョンソンの信用失墜

売り上げ比率が低いことを理由に、今回の事件を軽視する向きもありますが、そんなに単純な話しではありません。というのは、同社は高邁な経営理念(クレド)を掲げ、精神性を高く評価され医療分野でも信用されていたからです。

もし今回の事件が報道の通り、「悪を知りながら容認していた」のなら、同社のクレドに反します。信用失墜により全社全部門に影響を与えかねません。社会的にも大きな問題なのです。

なぜジョンソン・ベビー・パウダーにアスベストが

どうしてベビー・パウダーにアスベストが混入するのか。私もJNJの株主として、この問題について知る必要がありました。

いろいろ調べた結果、次のことが分かりました。

  • ジョンソン・ベビー・パウダーに限らず、パウダー状のものはタルクと呼ばれる白い鉱物を細かく砕いたものを原料にしているものが多い。タルクは粒子が細かく均一でサラサラしている。
  • タルクはファンデーション、ほお紅、アイシャドー、リップクリームなど女性用化粧品にも多く使われている
  • タルクは黒板用チョーク、洋裁用チャコ、などにも使われている
  • タルクは食品添加物や薬にも一部使われている
  • タルクの鉱床はアスベストの鉱床に近く、タルクの中にわずかながらアスベストが混入することがあり、以前から問題になっていた
  • ジョンソン・エンド・ジョンソンはアスベストを含まない品質の高いタルクを仕入れて使っていた(JNJの主張)
  • 「ジョンソン・ベビー・パウダー」をまたずれ防止のために長年にわたり陰部に常用していた米国の女性が卵巣がんになり、検査の結果卵巣から同社のベビー・パウダーの粒子が検出された。女性は同社を相手に訴訟を起こし裁判で勝訴している。
  • 似たような裁判は多数あり、いずれも原告が勝訴している、あるいは係争中であるが、ジョンソン・エンド・ジョンソンは一貫して「自社製品のタルクにはアスベストは含まれていない」と主張しており、ほとんどの裁判で上告中

以上が現状です。



JNJジョンソン・エンド・ジョンソンは売りか買いか

私の結論としては、JNJジョンソン・エンド・ジョンソンの株はこのまま保持します。また、もっと安くなれば買い足します。理由は次のとおりです。

  • もし「ジョンソン・ベビー・パウダー」の中に少量のアスベストが含まれていたとしても、上記現状に照らし合わせれば、故意、重過失とは認められず、社会的な信用失墜にはいたらない。
  • ロイター通信の報道のとおり「ジョンソン・ベビー・パウダーに少量のアスベストが含まれていた事実を示すデータがあった」としても、それが出荷前のものであり、同社はその結果をもとにタルクの調達先を変えたり品質チェックを厳しくしてアスベストを排除したのであれば同社の主張と食い違わない。
  • 裁判を起こした米国女性の卵巣内から同社のベビー・パウダーの粒子が検出されたが、その粒子にアスベストが含まれていたわけではない。
  • もし、タルク自体がどんなに品質チェックをしても、多少のアスベストを含む可能性があり危険なものならば、化粧品や食品、医薬品を含むすべての製品からタルクを排除しなければならない話に発展する。あるいは、少量のアスベストは危険ではないと認定せざるを得ない。
  • このような複雑な話なので、「故意に毒を混入した」とか、「毒を放置した」話として扱われず、直ちにジョンソン・エンド・ジョンソン=悪とはなりずらい。
  • もし、タルク自体が世の中から排除された場合でも、「ジョンソン・ベビー・パウダー」はタルクの代わりにデンプンなどほかの原料を多く使い、商品を改良して世に出す力がある。そして過去に「故意・重過失」が無かったことが認められれば信頼を回復できる。
  • 問題はブランドの信頼維持、回復だけである。財務の面では、係争費用、商品改良費用は十分補うことができ、長期で見れば大きな痛手にはならない。

ご参考になれば幸いです。

ごきげんよう。


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